ホーム 歯周病について 当院の歯周病治療コンセプト 当院の歯周病治療コンセプト 歯周病の病態について 歯周治療のゴールについて あい歯科の歯周治療におけるコンセプト 歯周病の治療法 歯周病の病態について ※右図 山本浩正 「イラストで語るペリオのためのバイオロジー 」クインテッセンスより 健全な歯周組織の場合、歯と歯肉の境界は生体的付着器官によって口腔内の細菌による体内への感染から守られています。 この付着という生体のバリアーは、[1]上皮性付着と[2]結合組織性付着に大別されます。[1]の上皮性付着は、体の免疫機構が働き常に細胞から血液中に含まれる免疫細胞が滲みでており、容易に細菌は体内に侵入することができません。その根尖側に位置する[2]の結合組織性付着は繊維により強固に歯と歯肉および歯槽骨と結合しています。また上皮性付着の歯冠側には[3]歯肉溝が存在し、その溝は常に免疫細胞で満たされることで細菌の体内への侵入を防いでいます。 ※山本浩正 「イラストで語るペリオのためのバイオロジー」クインテッセンスより 健全な歯周組織では、この[1][2][3]はそれぞれ約1mmずつの計3mm存在します。個人差や、部位により多少異なりますが、この約3mmを臨床的に生物学的幅径(Biologic width)と呼び、生体的付着の最小の大きさ(幅)を意味します。健全な口腔内が歯周病菌により感染を受けても通常はこの付着により守られ発症することはありません。しかしながら、清掃状態が悪い場合、又は清掃出来ない環境が口腔内に存在する場合、例えば多量に歯石が歯に沈着している、不適合な修復物が歯に装着されている、歯列不正があり歯ブラシが届かない、そして智歯(親知らず)が最後方臼歯の奥に中途半端に萌出している状態などでは、常に食べかすが停滞するようになり、そこに歯周病菌が繁殖します。そして停滞している菌が原因で歯肉に炎症が起こり、付着は破壊されます。つまり、清掃出来ているか否かが重要なのです。なぜなら、ほぼすべての人が親や身近な人から歯周病菌による感染を既に受けており、それぞれの人の口腔内にはもうすでに歯周病菌が存在するからです。歯周病は世界で最も蔓延している病の1つなのです。ただ、一律にそれぞれの歯が犯されているのではなく、発症元は清掃出来ていない部位からなのです。付着が歯周病菌による炎症で崩壊すると歯肉溝が病的に深くなり、歯周ポケットを形成します。ポケットが深くなると、更に深い根面に歯石が沈着して多量の歯周病菌がその中に繁殖します。しかしながら、歯周ポケットの最深部には強固な結合組織性付着が根尖方向に移動しながら体内への細菌の侵入を防いでいます。その結果、歯の周囲の歯槽骨は吸収されるのです。歯槽骨の吸収は、生体の防御反応からおこります。歯槽骨が吸収されることにより、上皮性付着と結合組織性付着は根尖側に移動しながら常に確保されています。ただ、骨吸収に伴い歯肉も退縮し、歯が長くなり動揺するようになります。 ※上図 山本浩正 「イラストで語るペリオのためのバイオロジー」クインテッセンス※右図 ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版Herbert F.Wolf Edith M .&Klaus H.Rateitschak永末書店 より 30代女性の初診時の口腔内写真とデンタルX-ray写真.歯肉が腫れているだけのように見えますが、X-ray写真では垂直的にかなりの歯槽骨が失われております。また6mm以上の歯周ポケットも存在しています。 ポケットが深くなると、更に清掃出来ない状況がポケット内に発生します。そして、ポケット内で繁殖した歯周病菌が他の歯に感染して同じことが口腔内全体に起こるのです。 歯周治療のゴールについて 歯周病に罹患した病的な歯肉の状態を健全な状態に改善するには、歯周ポケットを浅くしなければなりません。なぜなら、歯ブラシの届く限界は3mm以内だからです。 これは、過去の文献で報告されています。理想的な歯周治療のゴールはポケットを3mm以内に収めることです。 あい歯科の歯周治療におけるコンセプト 徹底的に歯石を除去し、汚染された根面をきれいにすることで、歯周ポケットは浅くなります。しかしながら、時間が経つにつれポケットは深くなる傾向にあります。 ※山本 浩正著「ペリオのためのバイオロジー」クインテッセンスより なぜなら、歯肉は半流動体の性質を持ち骨形態に追随せずに平坦になろうとするからです。つまり、除石により歯肉の炎症が軽減され一度は骨の形態に従い歯肉は退縮しますが、時間と共に再び周囲の歯肉の高さに影響され、下がった歯肉が元に戻りながら平坦化することでポケットは再発するのです。では、ポケットの再発を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?結論は歯周病により吸収された歯槽骨の形態を生理的な骨形態に改善することです。つまり、歯槽骨の頂上を周囲の骨レベルと同様に骨外科処置を行い平坦化することで再発は防げます。その治療法は切除療法と歯周組織再生療法に大別されます。 歯周病の治療法 歯周ポケットの深さ(デプス)を、3mm以内に収める 歯周病の治療には、医院での治療に加え、ご自宅でのセルフケアも大事です。そのため、「歯周ポケットの深さ(デプス)を、3mm以内に収める」ことをコンセプトに置いています。 なぜ、3mmなのか。なぜならその深さが、歯ブラシの毛先が到達できる限界だからです。しかも歯周病菌は「嫌気性菌」なので、空気の触れにくい深い場所ほど好みます。 当院では、セルフケアの可能な3mm以内の歯周ポケットは、健全値とみなします。しかし歯周ポケットが4mmを超えると、歯周病の病態は一気に進むので注意が必要です。 支持骨の再建で歯周病の再発防止 歯周病は、あごの骨の中に埋まっている歯槽骨(しそうこつ)を支える「支持骨」がダメージを受けることによって発生します。支持骨がダメージを受けると、歯槽骨が陥没し、歯槽骨の並びがガタガタになってしまいます。 その状態のまま治療やセルフケアを行なっても、そこからポケットが再発します。 歯槽骨の頂上を平坦化しないと、歯周病は再発するのです。 歯槽骨の頂上を周囲の骨レベルと同様に平坦化するには、「骨外科処置」による歯周外科的治療を行ないます。 治療法としては、「切除療法」と「歯周組織再生療法」の大きくふたつがあり、もしくはそのコンビネーションで行なわれます。 切除療法について 歯周病は、細菌により歯槽骨(歯を支えている骨)が吸収され、最後には歯が自然に抜け落ちてしまいます。 骨が吸収されたところには深い歯周ポケットが形成され、その中で歯周病菌が増殖して口全体に感染します。そこで、歯周病の治療は、歯周病菌の巣になってい る歯周ポケットの除去を目的とします。 歯周ポケットが存在しています。X線写真で歯槽骨の吸収が認められます。 歯周ポケットの除去をして歯周病を改善しても、歯を支えている歯槽骨の頂上を平らにしなければ、再び歯周ポケットが形成され、さらに歯周病は悪化します。 そこで、骨頂を平らにするために外科的に骨頂を削って骨の形態を改善することにより歯周病の再発を防ぎます。この手法は予想した治療結果になる予知性の高い治療法です。 左の図の黄色の部分の骨を外科的に削ることにより右の図のように骨頂を平らにして、歯周ポケットの除去を行います。しかし、この治療法を行うことで歯を支えている骨の高さが減少し、それにともない歯肉も下がります。特に見た目にかかわる前歯や、5mmを超えるような深 い歯周ポケットの場合は歯が長くなって審美性を失い、また歯を支える歯槽骨の高さが減少することにより歯が生理的な動揺の範囲を超え、歯を削って隣の歯と 修復物により連結して個々の歯にかかる力を分散する必要があります。また、歯肉が退縮して根面が露出し、知覚過敏を引き起こすことが生活歯の場合あります。知覚過敏が改善されない場合、神経をとらなくてはならない場合もあります。5mm以上のポケットを有する健全歯や審美領域の歯にはこの手法は通常適しません。主に5mm以内のポケットのある大きな修復物が装着されている失活歯や臼歯部などに行います。